たった一枚の紙

2007年4月21日 第1章
今日、正式に離婚が成立しました。

え?ほんとかって?
ほんとの話ですよ。では詳しい内容を。。

既に兄が父を説得していました。
「あなたがこの家に帰る事はできない。今後は施設しかないよ」
ってことを。

それで今日、私と母は父のところへ行きました、離婚届をもって。

車椅子の父を見た時、
青白い顔、細い足、動かない手。
全てが目に入ってきた。
「これがあの戦った父か」
またそう思ったよ。
そして
「兄から話聞いたよね?それで私と母が来た。今日来た意味はわかるよね?」

静かに小さくうなずく父。

離婚届を持ってきていたことがわかっていたようだ。

「ココとココに書いてください」
他人のように接する母。
その指示に納得できないような顔で
でも、ペンを動かした父。

現場には父と母とその間にいる私。

全てが書き終わった後、
「最後に握手だけしてくれないか?」
という父に対し
「いやです」
の母。
「袖だけでもいいんだ」
「それでもいやです」
悲しい場だった。
昔は愛し合った二人なのに・・・

「がんばってね」
母は続けた。
「・・・その言葉を聞きたかった」
と父は泣き崩れる。
「さよなら」
母は部屋を出た。
父がかわいそうに思えた。。。なんて思わないんだ。
だってこの入院している間も
女の人が毎日病室に見舞いに来ているのだから。
なぜ?そこまで母にしがみつくのだ?
近くに女の人がいるならその女の人にしがみつけばいいのに。
あーこれは別に父が憎いからいうのでなく、
一般的に生きていくためにはあてのあるほうに
倒れた方がいいからだ。

母は父宛に手紙を書いていたんだ。
私はその手紙を父が読み終わるまでその部屋にいた。
手紙の中には、
今までのこと、それからこれからの事が書かれている。
読み終わった手紙を私は封筒に直しながら
「これでわかったんじゃないか?家族がどれだけ大切かって事を」

うなずく父
さらに私は続けた。
「少なくとも私は学んだよ。そういう意味ではありがとう・・かな。1人で生きているようで、支えられていたんだよ。1人で支えているようで、支えられていたんだよ」

「俺が家族を持った時、このことを忘れることなく家族を支えていくよ。だから親父が第2の家族を持った時・・」

ココまで言って父が口を小さく開いた。
「いや、それはない」

しかしその言葉を消すように私は続ける。
「次の家族を持った時大切にしろよ。」

ほんとはもっときつい捨て台詞的なことを言うつもりだった。
ただ、それは感情が先行してしまうから心には響かないんだ。

父:「おれは何を目標にすればいいんだ」

私:「まだ生きているじゃないか」
父:「この状況だと死んでるのと同じだよ」
うむ。確かにな。
体は動かない。家族は去っていく。
でもね。全部あなたが引き起こしたんだよ。
父:「なにが間違えかといえば、俺自身が俺自身のことしか考えなかった事なんだな」
私:「その通りだよ」
父:「お前言うとおりだな。家族っていうのは大切だ」

最後に握手をして私は父と別れた。

車に乗って駐車場から出る時、
父が車椅子に乗って大きく口を開け
大きく手を振っているのを見えた。

正直いえば、それが脳裏に焼きついている。

さて、離婚届け。即市役所に提出し受理された。

そう、今日で戦いは終わったんだ。

後何があるか。母に夢を見させる事さ。
ただ・・この戦いが終わったことで
母の病気は速度を増すと思う。
「私が死んでも息子たちは巻き込みたくない」
その一心で2回の吐血、輸血を受けながらも
ココに帰ってきたんだ。

離婚が成立しはっきりと父を分かれた母はいわば
目標を達成した事になる。
だから早まるんだ、死が。

母に見せる夢の話はまた今度にしよう。

家族という存在。そこにいるのが当たり前。
違うんだよね。

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